大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

仙台高等裁判所 昭和34年(ナ)3号 判決

原告 植田万治郎

被告 福島県選挙管理委員会

補助参加人 沢田源次

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は「被告が昭和三四年五月二二日なした福島県石城郡選挙区福島県議会議員選挙における当選人植田万治郎の当選を無効とするとの決定はこれを取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、その請求の原因として

一、原告は昭和三四年四月二三日執行された福島県議会議員選挙に当り、訴外本間政男、沢田源次と共に同県石城郡地区から立候補した。同地区の県議会議員の定数は二名で、選挙開票の結果右選挙区選挙会は本間政男の得票一二、八二四、原告の得票一二、七二二、沢田源次の得票一二、七一四、無効票三一五、と判定し本間候補と原告を当選とし、沢田候補を次点と決定した。

これに対し選挙人訴外緑川芳文から同年四月二八日、次で同蛭田源録外二名から同年五月八日、いずれも原告の当選の効力に関し被告委員会に異議を申立て、被告委員会は同年五月二二日別紙開票区別投票点検表(以下単に点検表と略称する)記載の内容により、結局投票総数三八、五八一のうち、本間候補の得票一二、七九七、原告の得票一二、七二四、沢田候補の得票一二、七五二、と判定して請求の趣旨記載のように原告の当選を無効とする旨の決定をし、同月二五日前記異議申立人等に該決定書を送達するとともに、同月三〇日その告示をした。

二、しかしながら被告委員会の裁決には次の違法がある。

(一)  投票の認定について

被告委員会は本来無効なるべき投票に、無理に文字を製作、補充し憶測を加え、これを沢田候補又は本間候補の有効得票と認め、反面本来原告の有効得票たるべき投票を無効と認定した誤りがある。

以下別紙点検表の開票区別にこれを示せば次のとおりである。

(イ)  田人村開票区(問題となる投票、別紙異議票30番から69番まで)

点検表記載(計欄、以下同)の投票実数並びに同記載のように、

沢田候補の得票中 本間候補の得票    三

本間候補の得票中 沢田候補の得票    一

各混入の事実はそのとおりであるが、別紙主張のように、

沢田候補の得票中 無効となすべきもの 一〇

あり、他は選挙会の決定(但し数字は点検表の再計算による得票欄のものを示す、以下同)のとおり認むべきものであるから、結局得票は

本間候補 選挙会決定の数より増  二   四五九

原告   右と同数             七〇

沢田候補 右の数より減     一二 二、九二二

となるべきものである。

(ロ)  好間村開票区(問題となる投票、別紙異議票137番から208番まで、146、206は欠番)

点検表記載の投票実数並びに同記載のように

原告の得票中   沢田候補の得票 一

本間候補の得票中 沢田候補の得票 四

同        原告の得票   一

沢田候補の得票中 本間候補の得票 一

各混入の事実はそのとおりであるが、別紙主張のようになお無効となすべきもの

本間候補の得票中        五三

沢田候補の得票中        一二

あるほか、無効票から原告の有効得票となすべきもの一あり、他は選挙会の決定のとおり認むべきものであるから、結局得票は

本間候補 選挙会決定の数より減 五七 八、〇五七

原告   右の数より    増  一   四一七

沢田候補 同        減  八   八九六

となるべきものである。

(ハ)  川前村開票区(問題となる投票、別紙異議票209番から223番まで)

点検表記載の投票実数はそのとおりであるが、別紙主張のように

無効票中原告の得票となすべきもの  三

沢田候補の得票中無効となすべきもの 三

あり、他は選挙会決定のとおり認むべきものであるから、結局得票は

本間候補 選挙会決定の数と同数   四〇〇

原告   右の数より    増 三 七二三

沢田候補 同        減 三 七五〇

となるべきものである。

(ニ)  小川町開票区(問題となる投票、別紙異議票224番から244番まで、227は欠番)

(1) 点検表記載の投票実数はそのとおりであるが、別紙主張のように、無効とすべきもの

本間候補の得票中      三

沢田候補の得票中     一一

あり、逆に

無効票中原告の得票となすべきもの 一 あり、また

沢田候補の得票中 原告の得票   一

混入されており、

(2) 他に沢田候補の得票中無効となすべきもの二(「沢田源次万才」、「さわだまさお」と記載したもの、第一回検証調書第三組進行番号一一五、一一八)、

原告の得票中無効となすべきもの一(「植田万治郎万才」と記載したもの、第一回検証調書第二組進行番号一四)あり、

(3) 他は選挙会決定のとおり認むべきものであるから、結局得票は

本間候補 選挙会決定の数より減  三   八四六

原告   同        増  一 二、〇三六

沢田候補 同        減 一四 一、八四六

となるべきものである。

(ホ)  四倉町開票区(問題となる投票、別紙異議票245番から302番まで、263、269は欠番)

(1) 点検表記載の投票実数並びに同記載のように

原告の得票中   本間候補の得票 一

同        沢田候補の得票 一

本間候補の得票中 原告の得票   一

各混入の事実はそのとおりである。

(2) 他に原告の得票中本間候補、沢田候補の得票各一が混入され、また原告の得票中無効となすべきもの一

(〈うえ〉と記載したもの、第一回検証調書第二組進行番号四九)あるほか

(3) 別紙主張のように

本間候補の得票中 無効となすべきもの 一二

沢田候補の得票中 無効となすべきもの  三

無効票中原告の有効得票となすべきもの  二

あり、他は選挙会決定のとおり認むべきものであるから、結局得票は

本間候補 選挙会決定の数より減   一一 一、三一九

原告   同        減    二 七、九四七

沢田候補 同        減    一   七三八

となるべきものである。

(ヘ)  三和村開票区(問題となる票、別紙異議票303番から339番まで、322は欠番)

点検表記載の投票実数並びに同記載のように

原告の得票中   沢田候補の得票   一

沢田候補の得票中 原告の得票     一

各混入の事実はそのとおりである。

右のほか被告委員会は、本間候補の得票中に沢田候補の得票一九(異議票303番から321番まで)の混入を認めているが、これは後述の理由により全部無効となすべきものであり、更に別紙主張のように

無効票中原告の有効得票となすべきもの 一

沢田候補の得票中無効となすべきもの  六

あり、他は選挙会決定のとおり認むべきものであるから、結局得票は

本間候補 選挙会決定の数より減   一九   七七〇

原告   同        増    一 一、二一八

沢田候補 同        減    六 一、五五一

となるべきものである。

(ト)  遠野町開票区(問題となるもの、別紙異議票374番から423番まで、418、419は欠番)

点検表記載の投票実数はそのとおりであるが、別紙主張のように、無効となすべきもの

本間候補の得票中 一一

沢田候補の得票中 三二

あり、他は選挙会決定のとおり認むべきものであるから、結局得票は

本間候補 選挙会決定の数より減  一一   八七四

原告   右の数と同数           三一六

沢田候補 右の数より減      三二 三、九三九

となるべきものである。

以上を集計すると、得票総数は

本間候補 一二、七二五

原告   一二、七二七

沢田候補 一二、六四二

となり、本間候補と原告が当選人となり、沢田候補が次点となるべきものである。

(二)  混票の認定について

(1)  前示選挙会において、開票の結果原告と沢田候補の得票の差が僅か八票となつたため、慎重を期し再確認を経て開票結果を決定したにかかわらず三和村開票区において、本間候補の得票中沢田候補の得票一九票混入の事実が被告委員会により認定された。しかしながら「本間」と「沢田」の氏名を誤認することは常識上あり得ないばかりでなく、開票立会人においても混票の有無を調査確認しているのであつて、慎重な開票手続においてこのように多数の混票の生ずることは全く想像もなし得ないところである。

(2)  しかも右一九票の筆蹟はいずれも極めて正確な文字を以て明示され、判読に迷うようなものはないばかりでなく、一束の中に連続して混入している。またその筆蹟も極めて類似しているものが多い、別紙異議票の303、304、306、307、308、309、310、311、312、314、317、319、320、321、番がそれである。

(3)  同投票区の選挙人「吉田キサ」は代理投票をしないと明言しているのに、投票録には代理投票をした旨の記載がされている。

(4)  同投票区の沢田候補の得票の中には、投票用紙の裏面に記載したものが、特に他の投票区におけるよりも多数見受けられる。

(5)  同村選挙管理委員会は、開票後の投票を通常の書類を保管する役場内の倉庫に保管し、勤務時間中はそこで出入自由であり、役場職員は右倉庫開扉の方法を知悉している。

(6)  公職選挙法は「投票箱はできるだけ堅固な構造とし且つその上部のふたに各異なつた二以上の錠を設けなければならない」と規定しているにもかかわらず、同開票区の投票箱には全く施錠もなく放置の状態であり、投票直後から被告委員会の再調査までの投票の包装は皆目知り得ない状況にある。

以上の事実を総合すると、投票〆切後被告委員会が調査するまでの間において不正の行われた疑があり、このような事態において生じた前記の混票は、公正なるべき選挙のもとにおいては無効のものと解すべきである。

以上のように、原告植田万治郎の当選を無効とする旨の前示被告委員会の裁決は違法として取消さるべきものである、と陳述し、なお被告補助参加人の投票の認定に関する主張中、被告委員会の主張と牴触する部分は、民事訴訟法第六九条第二項に違反し当然無効と解さるべきものである、と述べた。

被告委員会指定代理人並びに被告補助参加代理人は主文同旨の判決を求め、原告主張事実の中、一、の事実二、の(一)、の(イ)(田人村)、(ロ)(好間村)の混票の存在、(ニ)(小川町)の(2)、の無効投票の存在、(ホ)(四倉町)の(1)、(2)、の混票と無効投票の存在、(ヘ)(三和村)の混票の存在、二、の(二)、の(2)の中一九票の混入票が一束の中に連続して混入している事実、二、の(二)、の(3)の中、投票録に「吉田キサ」が代理投票をした旨の記載のあることはいずれもこれを認めるが、その余はこれを争う。投票の有効、無効については別紙主張のように認定さるべきであり、原告主張の結果の生ずる余地がない、吉田キサは真実代理投票をしたものである、と述べ、なお被告補助参加代理人は、本件は行政事件であるから、裁判所の職権の発動を促す意味合から、被参加人の訴訟行為と牴触とする訴訟行為を補助参加人においてなし得るものである、と述べた。

(証拠省略)

理由

昭和三四年四月二三日執行された石城郡地区における福島県議会議員選挙の経過についての原告主張の一、の事実は当事者間に争がない。よつて先ず問題となる別紙異議票の投票につき、その有効無効を判断し各候補者の得票を算定することとするが、これらの投票の記載は第二回検証の結果により別紙写真のとおりであることを認めることができる。

一、田人村開票区(異議票30番ないし69番)

30(選挙会決定の沢田候補の得票、以下単に姓或は無効とのみ表示する)、左上欄の記載は不用意の汚染と認められ、特に意識的な他事記載と認め難い。沢田候補の有効得票と認める。

31(沢田)、上部の点は不用意の汚染と認められ、意識的な他事記載とは認め難い。

末尾の記載は「ろ」と判読されるが、これを除けば「沢田げんじ」と判読可能である。氏名の大体において符合する沢田候補の有効得票と認めるのが相当であり、右「ろ」の記載があるからといつて、他事記載或は原告と沢田候補の混記とは認め難い。

32(沢田)、特に原告主張の「へ」の文字の記載があるとは認め難く、また右下の点は記載の末尾に付する慣例的な打点と認められ他事記載とは認め難い。沢田候補の有効得票と認められる。

33(沢田)、上の一字は誤記の抹消であり、その下の点は不用意の汚染と認められるから他事記載とは認め難い。「さわた」と判読されるから右同様に認める。

34(沢田)、「ハ」の文字は「ワ」と発音されることがよくあり、(その右上の点は不用意の書損と認められる)また「ク」の文字は「タ」の文字と酷似していることと、末尾の記載は「ケ」と判読されること等からして、候補者中最もこれに類する発音の文字を含む沢田候補の有効得票と認めるのが相当である。

35(沢田)、下の二字は判読困難であるが、二字中上の一字は「源」の文字に類似する記載と認められない訳ではなく、いずれにしてもその筆勢から判断すると意識的な他事記載と認め難く、右同様沢田候補の有効得票と認めるのが相当である。

36(沢田)、末尾一字は「次」の文字と酷似しており、候補者中これと大体において符合する沢田候補の有効得票と認めるのが相当である。

37(沢田)、中の一字は「ワ」の発音を表示する意味の記載と解することは不自然でないから右同様に解する。

38(沢田)、「サワダツ」と判読可能で、「ツ」は「ゲンジ」の「ジ」を地方によりなまつてこのように記載するものがあることを考えると、候補者中これに最も類する発音の文字を含む沢田候補の有効得票と認めるのが相当である。

39(沢田)、末尾一字は「に」と判読されるから、他事記載として無効と認むべきものである。

40(無効)全体の表現からして、姓がこれに最も類似する本間候補の有効得票と認めるのが相当である。

41、42(無効)、いずれも二字目は「ん」、三字目は「ま」と判読可能であり、一字目は「ほ」の文字に類似する。右同様に解する。

43(無効)、上二字は「ホン」と判読可能である。その下の記載は筆勢から判断して特に意識的に他事を記載したものと認め難い。他候補者中氏名に「ホン」の発音の文字を含む者がないことからして本間候補の有効投票と認めるのが相当である。

44(無効)、二字目は「ン」、三字目は「マ」と判読可能であり、一字目は「ホ」の文字に類似することからして、前示「41」の判断と同様本間候補の有効投票と認めるのが相当である。

45(無効)、「マサオ」と判読可能であり、本間候補の有効得票である。

46 (無効)、三字目は「た」の文字に、五字目は「ん」の文字に類似しており、一字目は「さ」、二字目は「わ」、四字目は「げ」、六字目は「じ」と各判読可能であり、一字目「さ」の右の部分の記載は抹消の意味の記載と認められるから、候補者中最もこれに類似する沢田候補の有効投票と認めるのが相当である。

47(無効)、文字のたどたどしい点から考えると一字目は左文字にした「さ」の記載と認められ、他は「わげじ」と判読可能であるから、「さわだげんじ」の誤記及び脱字として沢田候補の有効得票と認めるのが相当である。

48(無効)、一字目は右と同様に認められる。二字目は「わ」、三字目は「タ」、四字目は「け」、五字目は「ち」と判読可能であるから右と同様に認定する。

49(無効)、一字目は「さ」、二字目は「わ」の文字に酷似しており、他は「たげんじ」と判読可能であるから、沢田候補の有効投票と認定する。

50(無効)、一字目は「さ」の文字に酷似しており、二字目は「わ」と判読可能であり、他は明らかに「たげじ」であるから、「さわたげんじ」の誤記及び脱字として沢田候補の有効投票と認めるのが相当である。

51(無効)、一字目は47、の判断と同様、二字目は「わ」、三字目は「タ」、四字目は「け」、五字目は「ち」と判読可能であるから、「さわタげんぢ」の誤記及び脱字として右同様に認定する。

52(無効)、一字目は「さ」の文字に酷似しており、二字目は「ワ」、三字目は「た」と判読される。右同様に認定する。

53、54(無効)、いずれも一字目は「さ」、三字目は「た」であり二字目は「わ」の文字に酷似している。右同様に認定する。

55(無効)、一字目は「さ」、三字目は「た」と判読される。二字目は判読困難であるが、一字目と三字目とを合わせると候補者中沢田候補のみの姓の発音と符合することから、右同様に認定する。

56(無効)、一字目は判読困難であるが、二字目は「田」であり、三字目は「源」の文字と発音を同じくする「原」の文字に類似し、四字目は「次」と判読可能であるから、候補者中沢田候補が最もこれに類似するものとして右同様に認定する。

57(無効)、一字目は「澤」の文字に類似し、三字目は右と同様であり、二字目は「田」、四字目は「次」である。同一理由から右同様に認定する。

58(無効)、三字目は判読困難であるが、一字目は「さ」、二字目は「わ」、四字目は「次」と判読されるから右同様に認定する。

59(無効)、一字目は「沢」の文字に酷似しており、二字目は「田」、三字目は「げ」、四字目は「ん」と判読可能であるから右同様に認定する。

60(無効)、一字目は「サ」と判読可能であり、二字目は「ワ」の文字に酷似しており、三字目は明らかに「タ」である。右同様に認定する。

61、62(無効)、いずれも「サタ」と判読可能である。「サタは発音上「サワダ」と地方によつては殆んど大差がなく、候補者中姓が最もこれに類似するものとして右同様に認定する。

63(無効)、一字目は明らかに「サ」であり、三字目は「タ」と判読可能である。二字目は明確な「タ」の文字の記載と断定し得るものではなく、「ワ」の文字の第一劃の書損による「ワ」の文字に類似のものと認められる。前記60、と同様に認定する。

64(無効)、記載全体を検討しても「サワダ」の誤記と認め難く、候補者の何人を記載したか確認できないものとして無効となすべきものと認める。

65(無効)、上と下の二字が沢田候補の姓の発音の上、下と一致し、かつ全体の語感が「沢田」の発音と類似する点からして沢田候補の有効得票と認めるのが相当である。

66(無効)、一字目は明らかに「サ」であり、三字目は「タ」と判読可能であり、二字目を仔細に検討すると単に「フ」と記載したものでなく「ワ」の文字を記載したものと認められる。沢田候補の有効得票と認める。

67(無効)、三字目「ク」の文字は「タ」の文字と書体が類似するし、末尾の「ヅ」は地方により特に「ジ」の音をなまつて発音されることの多いことと、本記載が稚筆ながら真面目なものと認められることからすると候補者中最もこれに類似する沢田候補の有効得票と認めるのが相当である。

68(無効)、二字目「フ」の文字は「ワ」の文字と書体が類似するし、四字目は「ゲ」の文字と類似することが認められる。右と同様の理由により同様に認定する。

69(無効)、沢田候補の名「源次」と原告の名「萬治郎」の両者の発音に共通する文字を記載しており、結局二名の候補者の氏名を記載したものとして無効となすべきものである。

以上により選挙会決定の無効票中、有効投票と認むべきもの

本間候補の得票           六

沢田候補の得票          二二

沢田候補の得票中無効たるべきもの  一

あることとなり、他に混票として

沢田候補の得票中本間候補の得票   三

本間候補の得票中沢田候補の得票   一

あることは当事者間に争がないから、結局各得票は

本間候補 選挙会決定の四五七より増八    四六五

原告   同決定と同数            七〇

沢田候補 同決定の二、九三四より増一九 二、九五三

となるべきものである。

二、好間村開票区(異議票137番から208番まで、146、206は欠番)

137(本間)、「本間」の二字の下の記載はその形態からみて不用意の書損と認められ、特に意識的な他事記載とは認め難い。本間候補の有効得票と認める。

138(本間)、末尾一字は「本間政男」の「男」の文字と同一であり、候補者中最もこれに類似する本間候補の有効得票と認めるのが相当である。

139(本間)、二字目左の記載は「ま」と判読でき、これを以て他事記載とは認め難く、またその横の「田」の記載は不用意の誤記と認められ特に意識的な他事記載とは認め難い。右と同様に認定する。

140(本間)、下三字は特に候補者の名を記載したものと認め難く、他事記載として無効たるべきものである。

141(本間)、三字目は「政」と判読される。末尾の「正」の記載は「政男」の「まさ」を表示する意味を以て記載したものと認められ、結局余字と解さるべきものであつて、これを以て意識的な他事記載とは認め難い。本間候補の有効得票と認めるのが相当である。

142(本間)三字目「ま」の下の記載は、姓と名を区分するために付した句読点に類する記載と認められ、他事記載とは認め難い。右同様に認定する。

153(本間)、「マサオ」は本間候補の名と符合するけれども、その余の記載は何等本間候補の氏名と共通或は類似するところがなく、結局候補者でないものの氏名を記載したものとして無効となすべきものである。

144(本間)、末尾一字は判読困難であるがその形態からみて不用意の書損と認められ、他事記載とは認め難い。本間候補の有効得票と認めるのが相当である。

145(本間)、「正」の文字の下の記載は全体として「雄」の文字を記載したものと認めるに難くないから、他事記載があるものとは認められない。右同様に認定する。

147(本間)、上二字「本間」の下の記載はその形態からみて不用意の書損と認められ、他事記載とは認め難い。右同様に認定する。

148(本間)、「ホ」の文字の上の記載は不用意な書損と認められ、他事記載とは認め難い。右同様に認定する。

149、150、151、152(本間)、本間候補に投票したものと認め難く、候補者の何人を記載したか確認できないものとして、いずれも無効となすべきものである。

153、154(本間)、いずれも一字目は「本」であり、二字目の記載は「間」の文字と酷似した書体であり、他の候補者の氏名にはこれに類する文字がないから、これに類似する文字を姓に含む本間候補の有効得票と認めるのが相当である。

155、156、157(本間)、「149」における判断と同様無効となすべきものである。

158(本間)、一字目は「本」であり、二字目は「田」の文字類似の記載とは認められず、「間」の文字に酷似している。右「153」におけると同様に認定する。

159(本間)、上一字のみは明確に「本」と記載してあるが、他は判読困難であり全体としてみると本間候補の有効得票と認め難く、「149」における判断と同様無効となすべきものである。

160(本間)、「ホマサ」と判読される。候補者中最もこれに類似する本間候補の有効得票と認めるのが相当である。

161、162(本間)、前示「149」における判断と同様無効となすべきものである。

163(本間)、一字目は「本」であり、二字目は「田」の文字類似の記載とは認められず「間」の文字に酷似している。前示「153」における判断と同様本間候補の有効得票と認めるのが相当である。

164(本間)、一字目は「ほ」の文字類似の記載と認められ、二、三字目は「んま」と判読できるから、候補者中最もこれに類似する本間候補の有効得票と認めるのが相当である。

165(本間)、前示「149」における判断と同様無効となすべきものである。

166(本間)、「ホンマ」と判読可能である。本間候補の有効得票と認める。

167(本間)、「もンマ」と判読される。前示「40」と同様本間候補の有効得票と認めるのが相当である。

168(沢田)、「サワタ」と判読可能で、沢田候補の有効得票と認める。

169(本間)、「ホクマ」と判読されるが、上と下の二字が本間候補の姓の発音の上、下と一致し、他の候補者中これと紛わしいもののないことからして本間候補の有効得票と認めるのが相当である。

170(本間)、「本」の一字のみであるが、他の候補者の氏名中これに類する文字を含むものがないから本間候補の有効得票と認めるのが相当である。「本」の文字の左下の「 」」は不用意の汚染と認められ、意識的な他事記載とは認められない。

171(本間)、「ホンママサキチ」であるが、候補者中氏名の最もこれに類似する本間候補の有効得票と認めるのが相当である。

172(本間)、「本田政男」であるが、右同様氏名の最もこれに類似する本間候補の有効得票と認めるのが相当である。

173(本間)、一、二字目は「本間」であり、三字目は判読困難であるが四字目は「正」と判読される。右同様に認定する。

174(本間)、「本田政夫」であり、「172」と同様に認定する。

175、176、177、178(本間)、いずれも「本田政男」で前記「172」と全く同様である。

179(本間)、「本田正雄」であり、前記「174」と同様、本間候補の有効得票と認める。

180(本間)、上の二字が「ほん」であり本間候補の姓の発音と一致し、かつ全体の語感の類似する点から右同様に認定する。

181(沢田)、「サカダ」であるが候補者中、姓の発音の最も類似する沢田候補の有効得票と認めるのが相当である。

182(沢田)、「さわら」と読めるが、右同様に認定する。

183(沢田)、上の部分は「さわだ」と記載してあるけれども、その他の部分は、特に沢田候補の名と共通するところがあると認めるのは困難であり、結局候補者でないものの氏名を記載したものとして無効と認むべきである。

184(本間)、一字目は「本」であり、二字目は「間」の文字に類似しており、その下の記載は「マ」と判続されるから他事記載或は原告、本間両候補の混記とも認められない。本間候補の有効得票と認めるのが相当である。

185、186、187、188(沢田)、末尾の「郎」又は「ロー」を除くその余の文字、発音の大体において符合する沢田候補の有効得票と認めるのが相当である。末尾に「郎」或は「ロー」の記載があるからといつて、これだけで氏名の混記或は他事記載があるものとは認め難い。

189(沢田)、沢田候補の名「源次」の「源」と、原告の名「萬治郎」の「治郎」を併せた記載であり、結局二名の候補の氏名を記載したものとして無効となすべきものである。

190(本間)、投票用紙の欠損していることは明白であるが、大部分は残存しており、第二回検証の結果によれば、右投票用紙はその余の投票用紙と紙質印刷文字及び選挙管理委員会の押印を同じくするものであることが認められ、これによると正規の用紙を使用したものであると認めるに支障はなく、右の欠損を以て直ちに選挙人が投票にあたり破つたものとなし難いから、無効のものとは認め難い。

191(無効)、「まん」と判読し難く、候補者の何人を記載したか確認できないものとして無効と認むべきものである。

192(無効)、上四字は「ウタマン」と判読可能である。候補者中最もこれに類似する原告の有効得票と認めるのが相当である。

193ないし198(本間)、いずれも無効投票であることに問題はない。

199(沢田)、候補者でないものの氏名を記載したものとして無効と認むべきものである。

200(沢田)、無効投票であることに問題はない。

201(沢田)、被告委員会主張のように無効のものと認むべく、「沢田源次」の誤記とは認め難い。

202ないし205(本間)、いずれも無効投票であることに問題はない。

207(植田)、候補者中文字、発音の最も類似するものとして原告の有効得票と認めるのが相当である。

208(無効)、原告主張のように無効となすべきもので、「げんじ」の誤記とは認め難い。

以上により、選挙会決定の無効票中原告の有効得票なるべきもの  一

同 本間候補の得票中無効となすべきもの           二三

同 沢田候補の得票中無効となすべきもの            五

あり、ほかに

原告の得票中   沢田候補の得票               一

本間候補の得票中 沢田候補の得票               四

同        原告の得票                 一

沢田候補の得票中 本間候補の得票               一

の各混入票あることは当事者間に争がないから、結局各得票は

本間候補 選挙会決定の八、一一四より減二七      八、〇八七

原告   同       四一六より増一         四一七

沢田候補 同       九〇四より減一         九〇三

となるべきものである。

三、川前村開票区(異議票209番から223番まで)

209(沢田)、一字目は「さ」で、二字目は「あ」または「わ」の文字を表示したものと認められ、三字目は「だ」で、四字目は判読困難であるが、五字目は「ぢ」と判読される。記載全体から、候補者中最もこれに類似する沢田候補の有効得票と認めるのが相当である。

210(沢田)、「さわはた」と判読され、右同様に認定する。

211(沢田)、記載全体の文字、発音から右同様に認定する。

212(無効)、「ウエダ」の誤記と認め難く、結局候補者の何人を記載したか確認できないものとして無効となすべきものである。

213(植田)、末尾の記載はその形態からして不用意の運筆の誤りと認められ、特に意識的な他事記載とは認め難い。原告の有効得票と認めるのが相当である。

214、215(無効)、いずれも候補者の何人を記載したか確認できないものとして無効となすべきものである。本間候補或は原告に投票したものとは認め難い。

216(無効)、二字目の判読は困難であるが、一字目は「ウ」、三字目は「タ」、四字目は「マ」であることが明らかであるから候補者中文字発音の最も類似するものとして原告の有効得票と認めるのが相当である。

217(無効)、左文字であるが、「グ」の文字は「ダ」の文字と書体が酷似することからして、候補者中最もこれに類似する沢田候補の有効得票と認めるのが相当である。

218(無効)、前示「214」と同様無効と認める。「ウエタマンジロウ」の誤記、脱字とは認め難い。

219(植田)、末尾の記載を除けば「うえだまんぢ」と判読可能であり、末尾の記載は「ろ」の文字と類似しているから、候補者中最もこれに類似するものとして原告の有効得票と認めるのが相当である。

220(植田)、一字目は「う」であり、二字目は「え」、三字目は「た」の文字に類似しており、末尾三字は「ぢろう」と判読可能である。右同様に認定する。

221(植田)、「ウエダ」は、「ウイダ」或は「イダ」となまり易いものであると認められるから右同様に認定する。

222(植田)、二字目は判読困難であるが、一字目は「う」、三字目は「た」と判読可能であるから、候補者中文字発音の最も類似する原告の有効得票と認めるのが相当である。

223(植田)、上二字は「上田」と判読され、その下の記載は形態からして不用意の書損と認められる。姓の発音の同一である原告の有効得票と認める。

以上により、選挙会決定の無効票中沢田候補の有効得票となるべきもの 一

原告の有効得票となるべきもの                   一

あり、結局各種得票は

本間候補 選挙会決定の同数                  四〇〇

原告   右決定の  七二〇より増一             七二一

沢田候補 同     七五三より増一             七五四

となるべきものである。

四、小川町開票区(異議票224番から244番まで、227は欠番)

224(本間)、末尾「を」の下部の記載は慣行的な句読点と認められ、他事記載とは認め難い。本間候補の有効得票と認める。

225、226(沢田)、原告の他事記載と主張する表示は、いずれも不用意な汚染と認められ、他事記載とは認め難い。いずれも沢田候補の有効得票と認める。

228(本間)、頭書二字は「ホンマ」と判読されるが、これ以外の記載は、本間候補の名と共通する点を認め難く、結局他事を記載したものとして無効と認むべきものである。

229(沢田)、頭書二字は「サワ」と判読され、その下は「タ」の文字と共通する部分があることから、候補者中最もこれに類似する沢田候補の有効得票と認めるのが相当である。他事記載とは認め難い。

230(沢田)、中一字は判読困難であるが、上下の二字が沢田候補の姓の上と下の発音と一致し、他の候補者中これと紛れるものの認められないことからして右同様に認定する。

231(沢田)、「さわた」と判読可能である。右同様に認定する。

232(沢田)、一字目は「サ」、三字目は「タ」と判読可能であり、二字目は「ワ」の文字と類似することから、候補者中最もこれに類似する沢田候補の有効得票と認めるのが相当である。

233(沢田)、上二字は「沢田」と判読可能であるが、他の記載は沢田候補の名と共通するものを認め難く、結局他事を記載したものとして無効となすべきものである。

234の1、2(沢田)、原告主張の押印の存しないことは当事者間に争ないが、検証(第一、二回)の結果に徴すると、右の点を除けばこの用紙は何等他の正規の用紙と選ぶところがなく、なお裏面には重ねられた他の正規の用紙から写つたと推認される印影が存するのであつて、右印影のないのは単に選挙従事者の過失によるものと思われる。右印影が存しなくても正規の用紙と認めるに支障がないというべきであるから、沢田候補の有効得票と認めるのが相当である。

235(沢田)、左文字の自書と認められる。沢田候補の有効得票と認めるのが相当である。

236(本間)、無効票たることに問題はない。

237、238(沢田)被告委員会主張のように無効となすべきものである。参加人の主張は認め難い。

239(沢田)、混票として原告の得票であることに問題はない。

240(無効)、原告の有効得票たることに問題はない。

241(植田)上二字は「植田」と判読でき、その下の記載は「ま」の文字に類似し、その下は「んじろう」と判読可能である。候補者中最もこれに類似する原告の有効得票と認めるのが相当である。

242(植田)、一字目は「植」の文字に類似し、二字目は「田」と判読され、三字目は「萬」の文字に酷似している。右同様に認定する。

243(植田)、「えだ」であるが、「うえだ」の発音を「えだ」となまりやすいことからして、右同様に認定する。

244(植田)、「ウイタマンキジ」と記載されていることは明らかであるから、これに最も類似する原告の有効得票と認めるのを相当とすべく、左下の記載はその形態からみて不用意の書損と認められ、他事記載とは認め難い。

以上により、

選挙会決定の本間候補の得票中無効となすべきもの 二

同     沢田候補の得票中無効となすべきもの 三

原告の得票となすべきもの 一

同     無効票中原告の得票となすべきもの  一

あるのであるから、右の計算のみで選挙会決定の得票中

本間候補 減 二

原告   増 二

沢田候補 減 四

となり、右のほか選挙会決定の有効票中無効たることに当事者間争のないもの

原告の得票中   一

沢田候補の得票中 二

あり、結局各得票は

本間候補 選挙会決定の  八四九より減二   八四七

原告   同     二、〇三五より増一 二、〇三六

沢田候補 同     一、八六〇より減六 一、八五四

となるべきものである。

五、四倉町開票区(異議票245番から302番まで、263、269は欠番)

245(本間)、上の五字は「ホンマサン」と認められ、末尾の記載は「お」の文字と認められる。被告委員会主張の誤記とは認め難く、末尾の一字は他事を記載したものとして無効となすべきものである。

246(沢田)、「沢」の文字の上の記載は特に二重丸を表示したものとは認め難く、「沢」を誤記し抹消したものと認められる。他事記載とはなし難く、沢田候補の有効得票と認める。

247(本間)、「本間」の文字と酷似しており、候補者中最もこれに類似する本間候補の有効得票と認めるのが相当である。

248、249、250(本間)、候補者中本間候補の姓また名の一部と符合しており、他の候補者中これに類似するものの認められないことからして本間候補の有効得票と認めるのが相当である。

251(沢田)、一字目は「沢」、三字目は「源」、「四字目は「次」の文字によく似ており、二字目は「田」と判読される。候補者中最もこれに類似する沢田候補の有効得票と認めるのが相当である。

252(沢田)、「サワタ」と判読可能である。沢田候補の有効得票と認める。

253(本間)、上二字は「本間」であるが、下二字は原告の名「萬治郎」の「治郎」と発音を同じくする「二郎」の記載であるから、結局本間候補と原告の二人の氏名を記載したものとして無効となすべきものである。

254(本間)、「本間」と判読される。二字目を「万」の文字の記載とは認め難い。本間候補の有効得票と認める。

255(本間)、前示「180」と同様本間候補の有効得票と認める。

256、257(無効)、いずれも原告主張のように「ういだ」、「ウタマロ」と判読することは困難で、候補者の何人を記載したか確認できないものとして無効となすべきものである。

258、259、260、261(本間)、無効票たることに問題はない。

262(植田)、一字目を「う」又は「ウ」、二字目を「え」、「イ」又は「エ」の文字の誤記と認めることは困難である。一字目は「サ」に類似し、二字目は「フ」であるが「ワ」の「ゝ」を欠けば「フ」となるから「ワ」に近い字といいうるし、三字目は明らかに「タ」であるから、沢田候補の有効得票と認めるのが相当である。

264(植田)、一字目「う」の左の記載は不用意の書損と認められ、他事記載とは認め難い。原告の有効得票と認める。

265、266、267、268、270(植田)、いずれも参加人の主張は認め難く、原告主張の事由により、右同様に認定する。

271(植田)、原告方の屋号を〈万〉と称することは、原告本人尋問の結果により明かであるから、原告に投票したものと認め右同様に認定する。

272(植田)、判読できるのは一字目「う」のみであり、結局候補者の何人を記載したか確認できないものとして無効となるべきものである。

273(植田)、「まりまん」と判読でき、「る」を「り」となまつて発音することにかんがみ「まるまん」の記載とみるべく、原告主張の事由により右「271」と同様に認定する。

274(植田)、一字目は「う」の文字に書体が類似しており、二、三字目は「えだ」と見るべきであるから、結局候補者中最もこれに類似する原告の有効得票と認めるのが相当である。

275(植田)、一字目は「う」二字目は「イ」であり、末尾の文字の書体が「ダ」と類似するものであり、右同様に認定する。

276(植田)、二字目は判読困難であるが、一字目は「う」、三字目は「田」であり、原告の姓の発音、文字と共通する点からみて右同様に認定する。

277(植田)、一字目は「う」、三字目は「だ」であり二字目は「え」の文字と書体が類似する。右同様に認定する。

278(植田)、一字目は「う」、二字目は「イ」と判読され、末尾は「ダ」の文字と書体が類似するものである。右同様に認定する。

279(植田)、「まんぢう」と認める。候補者中「名」の最もこれに類似するものとして右同様に認定する。

280(植田)、上の二字は「マン」であり、末尾は「フ」であるが、三字目は判読困難であるから、候補者の何人を記載したか確認できないものとして無効となすべきものである。「マンヂロウ」の表示の脱字と認め難い。

281ないし301(植田)、「281」は「ウタ」であり、「282」は「ユけたまチろ」、「283」は一字目は「ワ」であるが「ウ」の「ヽ」を欠けば「ワ」となるから「ウ」に類似したものというべくその余は「イマン」であり、「284」は一字目は「う」と判読でき、二字目は「え」に類似し、三字目は判読困難であるが「田」に近い字ともいい得られ、四字目以下は「まんぢ」であり、「285」は一字目は「ウ」であるが「ウ」の「ヽ」を欠けば「ワ」となるから「ウ」に類似したものというべく、二字目は「イ」であり、三字目は「グ」であるから「ダ」と類似するというべく、「286」は一字目は「ラ」であるが「ウ」に類似したものといいうべく、その余は「イマンジロ」であり「287」は一字目は「う」であり、二字目は「え」に類似し、その余は「だまんぢろ」であり、「288」は「うだまんぢう」であり、「289」は一字目は「上」に類似し、二字目は「田」であり、「290」は一字目は「う」であり、二字目の右側は書損の抹消で左側は「え」であり、「291」は「うえた」と判読可能であり、「292」は一字目は書損の抹消二字目は「ウ」に類似し、その余は「エ田」であり、「293」は「ウエエ」であり、「294」は「万」であり、「295」は上三字は「えいた」、四字目は「マ」に類似し、五字目は「ん」であり、その余は判読困難であり、「296」は「治郎」と判読可能であり、「297」は上二字は「ウイ」、その下は書損の抹消、末尾は「イ」であり、「298」は上二字は「根本」であるが、その余は「萬次郎」であり、「299」は一字目は「う」に類似しその余は「えた」であり、「300」は「マンジ」であり、「301」は一字目は「ウ」、二字目は「エ」に近似し三字目は「タ」であるからいずれも候補者中最もこれに類似する姓名の原告の有効得票と認めるのが相当である。参加人の主張は採用し難い。

302(植田)、一字一字刻明に記載され、文字の形態にも誤りがなくまた拙筆とも認められないことなどを併せ考えると、原告植田萬治郎に投票する意図をもつてたまたま誤記したものであるとは認め難く、「田植」は稲作の意味を含め、「萬重」は食物の意味をも含めて記載した悪戯的なものと認められ、結局候補者の何人を記載したが確認できないものとして無効となすべきものである。

以上により、選挙会決定の本間候補の得票中無効となすべきもの 六

同          原告の得票中  無効となすべきもの  三

同          沢田候補の有効得票となすべきもの   一

あることとなる。

右のほか混票として

本間候補の得票中   原告の得票              一

原告の得票中   本間候補の得票              一

同        沢田候補の得票              一

あり、更に選挙会決定の原告の得票中、無効となすべきもの   一

あるほか、同本間候補、沢田候補の有効得票         各一

混入の事実は当事者間に争がない。

結局各得票は、

本間候補 選挙会決定の一、三三〇より減五      一、三二五

原告   同     七、九四九より減八      七、九四一

沢田候補 同       七三九より増三        七四二

となるべきものである。

六、三和村開票区(異議票303番から339番まで、322は欠番)

303番から321番までの一九票については、原告はその無効を主張するが、後述のように、これはいずれも沢田候補の有効得票と認める。

323(沢田)、「ダ」の文字の下の記載は不用意の書損と認められ、沢田候補の有効得票と認めるのが相当である。

324(沢田)、上三字は「サワタ」と判読でき、下二字は「ンジ」と判読される。四字目は判読困難であるが、候補者中最もこれに類似するものとして右同様に認定する。

325(沢田)、上二字は「さわ」と判読でき、末尾の文字は「だ」の文字に酷似する。右同様に認定する。

326(沢田)、一字目は「さ」、三字目は「た」と判読でき、二字目は「わ」の文字酷似の形態の記載のあることが認められる。右同様に認定する。

327(沢田)、「成田けんじ」と判読され、成立に争のない乙第五号証により三和村の同名又はこれに類似する名の者が実在しないことが認められる事実を併せ考えると候補者中最もこれに類似するものとして右同様に認定する。

328(沢田)末尾一字は「に」の文字を記載したものと認められる。他事記載として無効となすべきものである。

329(無効)、原告の有効得票であることに問題はない。

330(無効)、二字目は「レ」と見られるが、一字目「サ」、三字目「タ」と判読され、沢田候補の姓の冒頭と末尾の発音がこれと一致し、他の候補者中これと紛れるものの認められないことからして、沢田候補の有効得票と認めるのが相当である。

331(無効)、一字目「ま」、三字目「を」と判読され、二字目は「さ」の文字を左書に誤記したものと認められない訳でもないから、候補者中最もこれに類似する本間候補の有効得票と認めるのが相当である。

332(植田)、末尾の記載は不用意の書損と認められ、これを以て他事記載とは認め難く、その他は「ういだまん」と判読できるから、候補者中最もこれに類似する原告の有効得票と認めるのが相当である。

333(植田)、「うえまん」と判読でき、右同様に認定する。

334(植田)、一字目は「植」の文字に酷似し、二字目は「田」、三字目は「万」、末尾から二字目は「次」と判読され、末尾「郎」の文字に類似する。その余は不用意の書損と認められ、結局右同様に認定する。

335(植田)、一字目は「植」の文字に類似し、二字目は「田」、三字目は「萬」と判読できる。右同様に認定する。

336(植田)、一字目は「う」の文字によく似ており、その余は「イダ」」と判読できる。右同様に認定する。

337(植田)、一字目は「う」、末尾は「ま」の文字に酷似し、二字目は「ゑ」、三字目は「だ」と判読できる。右同様に認定する。

338(植田)頭初の「う」の下は「イ」の文字を二個並べ記載したものであるが、そのうち一字は不用意の書損の余字と認められ、その余は「たマンチ」であり、「チ」の下の記載も不用意の書損でともに意識的な他事記載とは認められない。右同様に認定する。

339(無効)、「サワダ」の誤記、脱字とは認められず、結局候補者の何人を記載したか確認し難いものとして無効となすべきものである。

以上により、選挙会決定の無効票中

本間候補の有効得票となすべきもの              一

原告の有効得票となすべきもの                一

沢田候補の有効得票となすべきもの              一

同沢田候補得票中 無効となすべきもの            一

同本間候補の得票中混票として沢田候補の得票となすべきもの 一九

あることとなり

他に混票として

原告の得票中 沢田候補の得票                一

沢田候補の得票中原告の得票                 一

あることは当事者間争がないから、結局得票は

本間候補 選挙会決定の   七八九より減一八      七七一

原告   同      一、二一七より増一     一、二一八

沢田候補 同      一、五五七より増一九    一、五七六

となるべきものである。

七、遠野町開票区(異議票374番から423まで、418、419は欠番)

374、375(沢田)、原告主張の各欄外の記載は、いずれも不用意の汚染と認められ、意識的な他事記載とは認め難い。沢田候補の有効得票と認める。

376(沢田)、「サ」の文字の横の記載は単なる抹消であり、「ダ」の文字の下の記載は不用意の書損と認められ、他事記載とは認め難い。右同様に認定する。

377(本間)、一字目の左に被告主張の点のようなもののあることは認められるが、これを以て一字目を「ほ」と判読し難く、二字目は「ん」であるが、三字目は判読不能で結局候補者の何人を記載したか確認できないものとして無効となすべきものである。

378(本間)、「ホム」としか判読できない。右同様無効と認定する。「ホンマ」の誤記脱字とは認め難い。

379(本間)、上二字は「ほん」と判読され、末尾は「ま」に類似する。候補者中最もこれに類似する本間候補の有効得票と認めるのが相当である。

380(本間)、一字目は「ホ」と判読できるが、その余は判読困難で前示「377」と同様無効と認定する。

381(本間)、上三字は「ほんま」と判読されるし、四字目は「さ」の文字を左文字に記載した誤記と認められない訳でなく、末尾は「お」の文字に類似する。右「379」と同様に認定する。

382(本間)、三字目は「邦」の字に類似するが一字目は「本」、末尾は「夫」と判読され、二字目は「間」の文字に類似する。成立に争いのない乙第二号証によれば遠野町には当時本間邦夫なる者の実在しないことが明らかである。右同様に認定する。

383(沢田)、一字目は「サ」、三字目は「た」と判読されるが、全体として候補者の何人を記載したか確認し難く、無効となすべきものである。「サワたけんじ」の不完全な記載とは認め難い。

384(沢田)、上三字は「サバタ」であるから沢田候補の表示と認め得ない訳ではないが、他の記載は沢田候補の名と共通するところを認め難く、結局他事記載として無効となすべきものである。

385(沢田)、「沢田」の文字に酷似し、その誤記と認め得るから沢田候補の有効得票と認める。

386(沢田)、「さタケジ」と判読される。候補者中最もこれに類似する沢田候補の有効得票と認めるのが相当である。

387(沢田)、「サタ」と判読される。沢田候補以外の候補者でこれに紛れる者は認め難いから、右同様に認定する。

388(沢田)、「さわ田」と判読可能であるから沢田候補の有効得票と認定する。

389(沢田)、一字目は「サ」、三字目は「タ」であり二字目は「ワ」の文字と類似する。前示「386」と同様に認定する。

390(沢田)、「さわ」と判読され、末尾は抹消の記載と認められる。

前示「387」と同様に認定する。

391(沢田)、二字目は「田」の文字の記載であり、一字目は「沢」、三字目は「源」、四字目は「次」のいずれも不完全な記載と認めるに難くない。沢田候補の有効得票と認めるのが相当である。

392(沢田)、一字目は「さ」、二字目は「は」、四字目は「ん」、五字目は「ぢ」であり、三字目は「け」の文字に類似しており、候補者中最もこれに類似する沢田候補の有効得票と認めるのが相当である。

393(沢田)、一字目は不用意の余字と認められ、特に他事記載とはなし難い。その余は「さわた」であるから、沢田候補の有効得票と認める。

394(沢田)、「さわ田」と判読可能である。右同様に認定する。

395(沢田)、一字目は「サ」、二字目は「ハ」と判読されるし、三字目は「タ」の文字に類似する。前示「392」と同様に認定する。

396(沢田)、一字目は「さ」の文字のほかに誤記と認められる線のような記載があり、結局「さわた」と判読される。「394」と同様に認定する。

397(沢田)、「サワ」と判読される。前示「390」と同様に認定する。

398(沢田)、「沢田」と判読可能である。沢田候補の有効得票と認める。

399(沢田)、一字目は「サ」と判読されないでもないが、その余は判読不能であり、全体として候補者の何人を記載したか確認し難く、無効となすべきものである。

400(沢田)、「サワクインケ」と判読できる。記載全体からして右同様に認定する。「サワダゲンジ」の誤記とは認め難い。

401(沢田)、下二字は「ワダ」と判読できるし、その上の記載は「さ」の文字を左字にした誤記と認められない訳ではなく、なおその上の記載は不用意の書損と認められる。結局候補者中最もこれに類似する沢田候補の有効得票と認めるのが相当である。

402(本間)、上二字は「ホマ」と判読できるし、その下の記載は不用意の書損と認められる。候補者中これに類似する本間候補の有効得票と認めるのが相当である。

403(沢田)、一字目は「サ」と判読し得る記載に、横の線が不用意に加わつたものと認め得ない訳でなく、二字目は「ワ」と判読でき三字目は「ダ」である。

候補者中最もこれに類似する沢田候補の有効得票と認めるのが相当である。

404(沢田)、二字目は判読困難であるが、一字目は「サ」、三字目は「タ」である。前示「330」と同様沢田候補の有効得票と認めるのが相当であり、なお「サ」の文字の部分の原告主張の記載は不用意の汚染と認められ、他事記載とは認め難い。

405、406(本間)、明らかに「本田政男」であるから、候補者中最もこれに類似する本間候補の有効得票と認める。

407(本間)、一字目は「ほ」の文字と近似する書体であり、その余は「んま」である。候補者中これに類似する本間候補の有効得票と認めるのが相当である。

408(本間)、「ホマ」と判読される。右同様に認定する。

409、410、411(沢田)、「409」は「サワダケンキチ」であり、「410」は「沢田源治郎」、「411」は「沢田源次郎」である。成立に争いのない乙第二号証によると遠野町には当時「沢田源治郎」又は「沢田源次郎」なる者の実在しないことが明らかであり、証人沢田源次の証言によれば、候補者沢田源次は当時その住所地において「沢田源次郎」と呼称していたことがうかがわれる。いずれも候補者中最もこれに類似する沢田候補の有効得票と認めるのが相当で、原告の主張は採用し難い。

412(沢田)、型紙を使用したものと認められるから、候補者の氏名を自書しないものとして無効となすべきものである。

413(沢田)、一字目は「沢」の文字と酷似し、二字目は「田」であるから候補者中最もこれに類似する沢田候補の有効得票と認めるのが相当である。「田」の下の記載は単に抹消の記載と認められ、他事記載とは認め難い。

414(沢田)、無効票であることに問題はない。

415(沢田)、一字目は「サ」、三字目は「タ」二字目は「ユ」であるが、前示「330」「404」と同様、沢田候補の有効得票と認める。

416(沢田)、上三字は「サワダ」であるがその他は「オマン」であり他事記載と認められ、無効となすべきものである。「ゲンジ」の誤記とは認め難い。

417(無効)、一字目は「ち」であり、その余は判読不能で、全体をみても候補者の何人を記載したか確認し難いから無効となすべきものである。

420(植田)、「うえだまんし」と判読され、その下の記載は不用意の誤記と認められる。候補者中最もこれに類似する原告の有効得票と認めるのが相当である。

421(植田)、「まんぢう」と判読される。右同様に認定する。

422(無効)、一字目は判読不能であり、その余は「フク」であり候補者の何人を記載したか確認し難いから無効となすべきものである。

423(無効)、一字目は「む」に類似し、二字目は「ゆ」に類似、その余は「だんじ」であるから、右同様に認定する。

以上により、選挙会決定の本間候補の得票中無効となすべきもの 三

同           沢田候補の得票中無効となすべきも  七

あり、結局各得票は

本間候補 選挙会決定の八八五より滅三          八八二

原告   選挙会決定と同数               三一六

沢田候補 同    三、九七一より減七       三、九六四

となるべきものである。

なお原告は、被告委員会の主張に牴触する参加人の主張は無効である旨主張するが、投票の効力に関する主張は事実そのものゝ主張ではなく、事実を基とする法律上の見解の表明と解すべきであるから、参加人の主張中、投票の効力に関する被参加人の主張に牴触する部分も、これを民事訴訟法第六九条第二項に反する無効のものであるとすることはできない。

結局以上各得票を総計すると

(開票区)   本間候補     原告   沢田候補

田人村      四六五     七〇  二、九五三

好間村    八、〇八七    四一七    九〇三

川前村      四〇〇    七二一    七五四

小川町      八四七  二、〇三六  一、八五四

四倉町    一、三二五  七、九四一    七四二

三和村      七七一  一、二一八  一、五七六

遠野町      八八二    三一六  三、九六四

総計    一二、七七七 一二、七一九 一二、七四六

の結果となる。

次に原告主張の三和村開票区における一九票の混票の有効、無効について判断する。

同開票区において、本間候補の有効得票の束の中に、被告委員会が沢田候補の有効得票と判定した一九票(別紙異議票303番から321番まで)が連続して混入していたことは当事者間に争がない。

原告は右一九票中類似筆蹟のものが多数存する旨主張するが、その主張にかかる票を比較検討しても直ちに同一或は類似筆蹟のものがあるとは断定し難いし、他に右主張事実を認むべき資料はない。

次に選挙人吉田キサの代理投票の事実の有無について検討するに、成立に争のない乙第九、第一三号証、証人田子甲平の証言、同証言により真正に成立したと認める同第一〇ないし第一二号証によると、同人は明かに代理投票をしていることが認められる。この点に関する証人吉田雄一郎の証言並びに原告本人尋問の結果は右の証拠に照して採用し難いし、甲第一号証によつてもこれを動かし難く、他に右認定を左右すべき証拠がないから、原告の代理投票に関する主張は採用することができない。

また三和村開票区において沢田候補の得票中、用紙裏面に記載したものが他の開票区におけるより多かつたとしても、他に特別の資料のない限り、これを以て直ちに投票その他に不正が行われたかの疑を生ぜしめる事由とはなし難い。

なおまた同開票区において、開票後被告委員会が再調査するまでの間に、投票束に何等かの不正な加工をした疑のあることはこれを認めるに足る資料がなく、証人横田謙一郎の証言によつても三和村選挙管理委員において保管中右投票束が開披されたことなどの形跡のないことが認められるし、原告主張の投票箱の管理についても、証人須藤秋男の証言によると、施錠などに不充分なところはなく、管理について特に他から疑念をさしはさむような事態のなかつたことが推認できる。原告は三和村役場倉庫における投票束保管に関し云為するところがあるけれども、右証人横田謙一郎の証言によると投票束は書類金庫に保管され、更に鉄製の投票かんに入つていたことが認められ、かつ前示のように投票束開披の形跡の認められないことなどからして、その保管につき疑念をいれるべき事態はないものといわなければならない。その他右開票区において、投票、開票手続、開票後の票の保管等につき、不審を抱かしめる状況のあることはその資料がない。

もとより混入票の生ずることは、公職選挙法の定める厳格な開票手続からすると、通常あり得ないものであるとしても、本件の選挙において他にも混入票の存した事実は原告においてもこれを承認するところであるし、証人須藤秋男、佐藤寿磨、草野一、合津忠の各証言を総合すると、前示一九票の混入は、開票の際の点検に十分でない点があつたために生じた単なる手違いによるものと認められる。多数連続混入していた事実は、何等右認定を左右するものでない。したがつて右一九票は沢田候補の有効得票と認むべく、無効である旨の原告の主張は採用し難い。

以上により各得票は本間政男一二、七七七票、原告一二、七一九票、沢田源次一二、七四六票と確定されるべきものであるから、前示石城郡地区選挙会において決定した原告の当選は無効とするものである。

よつて前示福島県会議員選挙における当選人植田萬治郎の当選を無効とする旨の被告委員会の裁決は結局において正当であるから、これが取消を求める原告の本訴請求は失当として棄却すべく、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 鳥羽久五郎 畠沢喜一 桑原宗朝)

(別紙省略)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例